タジキスタン共和国ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画準備調査

我が社では、「タジキスタン共和国ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画準備調査」を請け負っております。本調査の対象は、タジキスタンの南部アフガニスタンとの国境に位置し、国内で最も人口の多いハトロン州にあるハマドニ県の中央病院小児科病棟です。

ハマドニ県中央病院 小児科病棟

ハマドニ県中央病院 小児科病棟

本件は医療施設としては劣悪な環境下にある小児科病棟の建て替え及び医療機材の整備を内容とする無償資金協力事業「ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画」を日本政府に要請したものです。

要請には、一般病室の他、小手術室、超音波検査等の検査室、集中治療室(ICU)、処置室等を兼ね備えた小児科棟の建設と必要な医療機材の整備が含まれます。

対象病院であるハマドニ県中央病院は、人口約13万人のハマドニ県の2次医療施設として、産婦人科棟、外科棟、小児棟、検査棟等の独立した施設から構成されています。本院は、近隣県の病院よりも劣悪な状態にあると言われているように、病院内の多くの建物は、旧ソ連時代に建てられた大変古い1階建ての平野造りであり、対象である小児科棟も同様に古く、腐食が激しい建物でした。

閑散としている小児科病棟の集中治療室 (ICU)

閑散としている小児科病棟の集中治療室 (ICU)

現在の小児科棟は、一般病室と集中治療室(ICU)で構成されています。ICUと言いましても、輸液ポンプ、ネブライザーがあるだけで、本来ICUに整備されるべき高度医療機材は無く、重症患者の集中治療が出来る環境とは言い難い状況でした。

このような環境下においても、病院スタッフは、入院中の子供たちのために病棟内をきれいに掃除し、床を磨いている様子を何度も見かけ、タジキスタンの医療スタッフの勤労な様子を伺うことができました。

調査中、小児病棟に入院中の患児に付き添う母親にお話を伺う機会がありました。

「冬期には、子供がよく体調を崩すが、病院に連れて来たくない。この病院の中は、自宅よりも寒くて、凍えてしまうので、病気を治すために来た病院で子供はかえって具合を悪くしてしまう。新しい小児科の建物が完成したら、冬でも病気の子供たちを暖かい病室の中に入院させてあげられたら、親にとってはこの上なく嬉しいこと。」

小手術室の様子

小手術室の様子

ハマドニ県では、厳冬期に気温が氷点下20度まで下がり、大変厳しい環境になりますが、現在の小児科病棟では暖房設備は老朽化し、使えない状況です。患児の母親の言葉にあったように、このことが患者の病院へのアクセスの阻害要因の一つとなっていることが考えられ、病院統計上においても冬期の患者数は他の月の3~5分の1程度となり、著しく少ないことがあらわれています。

 

また、保健省の2012年の統計データでは、ハマドニ県のあるハトロン州は、人口の半数が貧困層であり、5歳未児死亡率(43対出生千)および乳児死亡率(34対出生千)は、タジキスタン国内でも最も高いという現状です。この保健指標だけではなく、現地での状況や医療従事者や患者さんへの聞き取り調査から、ハマドニ県中央病院の施設や機材整備の改善による小児の健康改善は急務であるということを理解できました。

首都ドゥシャンベからハマドニ県をつなぐ幹線道路

首都ドゥシャンベとハマドニ県をつなぐ幹線道路

また、調査地であるハマドニ県へは、首都ドゥシャンベより車で2時間半から3時間程度です。本院で診断・治療が難しい患者は、高度な医療施設へリファーラルされることになっており、そのうちの7割の患者は首都のトップレファラル病院へ搬送されます。本案件で小児科病棟が整備されることにより、今まで診断・治療のために首都に行かざるを得なかった患者が減ることも期待されています。

 

タジキスタンと日本は、20年以上の友好関係があり、タジキスタン国内では親日家の多さを実感しました。タジキスタン国内には、日本語を学ぶ機関も数か所あります。今回の調査においても、日本への留学経験がある勤勉な日本語通訳さんたちに大変お世話になり、調査を滞りなく終えることが出来ました。

活気のある首都ドゥシャンベのバザールにて

活気のある首都ドゥシャンベのバザールにて

本案件によって、タジキスタン共和国ハマドニ県の小児医療サービスの向上が子供たちの健康改善に貢献されることを切に願っております。