ペルー国 災害時における救急医療に係る情報収集・確認調査

thumb_DSC01784_1024死ぬまでに行きたい絶景として有名なマチュピチュをはじめ、世界各地から観光客がやってくる世界遺産大国ペルー。日系人も多く暮らすこの国は、日本と同じく環太平洋火山帯に位置し、地震や津波、洪水、土砂災害など多様な自然災害リスクを抱えています。2007年のリマ沖を震源地とするM8の大地震は、イカ県を中心に甚大な被害をもたらしました。

現在、我が社はペルーにおける災害リスク管理に主眼を置き、新規支援の可能性を検討するための「災害時における救急医療に係る情報収集・確認調査」を請け負っており、今回は第一次調査として3週間ペルーに出張して参りました。

IMG_1060ペルーは沿岸部・アマゾン地域・アンデス山岳地帯と、3つの非常に異なる地形をもち、その特殊性から自然の恩恵を受ける一方で、様々な災害リスクにさらされています。ペルーには多くの防災関連機関が設置されており、そのひとつである国立工科大学地震防災センター(CISMID)は1986年にペルー国の要請を受け、日本の技術協力によって設立されたものです。センター長をはじめとし、研究員の多くが日本の大学で地震や津波対策を学んだ経験を持っているとのことでした。このCISMIDがリマの14ヵ所を対象とした建築物の耐震脆弱性の調査を行った結果、実に70%の病院において脆弱性は高く、建て直しや補強が必要であることが明らかになっています。

thumb_DSC01535_1024今回は防災関連機関およびリマ市の三次医療施設を中心に調査を実施しましたが、なかには施設自体が歴史的建造物であり、取り壊しや耐震補強が困難だという病院もありました。築100年を超え、老朽化も進んでいる病院の災害対策は、近年改定された国の病院建築基準においても早急に対処すべきところですが、文化遺産保護の観点から物事はそう簡単ではなく、ジレンマを感じます。

IMG_1442調査した三次医療施設のすべてが、高度医療を求めて全国から訪れた比較的貧しい人々で溢れ、病院の構造上・機能上の許容範囲を超えた状況にありました。さらには、保健省が設置した緊急医療援助サービス(救急車搬送システム)は非常に限局的であり、この役割を実質担っているのは消防隊員でした。これらの消防隊員はなんとボランティアで活動しており、ペルーの人々の並々ならぬボランティア精神には、ただただ頭の下がる思いです。平時においてもリファラル体制が確立されていないなど、保健医療や救急医療の課題が山積しているペルーですが、どのような支援がペルーにとって適切であり、必要とされているのかを、今後の調査で明らかにしていきたいと思います。

thumb_DSC01483_1024thumb_DSC01924_1024