第3回患者安全サミット

2018年4月13日~14日にかけて、患者安全に関する国際的な専門家会合・閣僚級会合である「第3回患者安全サミット」(主催:厚生労働省、共催:日本医療安全調査機構、日本医療機能評価機構、後援:国際協力機構(JICA)、国立国際医療研究センター)に参加してきました。同サミットは2016年にイギリスで始まり、2017年のドイツに続き、第3回目は、2000年以降、国を挙げて体系的な制度構築と改善に取り組んできた日本での開催となり、44カ国から約500人が参加しました。

閣僚級会合における加藤厚労大臣の開会挨拶

参加各国・機関の代表者

我が社は、本サミット参加者のために用意された「KAIZEN報告書」のうち、途上国における5S-KAIZENと患者安全について、JICAと共に厚生労働省への情報提供、報告書作成に協力しました。

KAIZEN報告書

世界では、約10%の患者が何かしらの医療過誤を受けていると言われ、患者安全の問題は先進国、開発途上国ともに大きな課題となっています。また、医療過誤により支出される費用(診断ミスによる症状の重篤化、薬剤の副作用による入院等)も膨大で、健全な病院経営の視点からも重要な課題です。

近年、世界的にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられること(出展:JICA))の重要性が注目されていますが、これまではUHCの議論の中で、医療サービスへのアクセスの向上が焦点となることが多かった半面、医療サービスの質や安全についての議論はあまり深められていませんでした。今回のサミットでは、医療安全はUHCの達成要件の一つであり、保健医療システムの一部として患者安全文化やシステムを構築することの重要性が確認されました。特に、保健医療システムが既に確立された状態で患者安全システムを構築することはコストがかかり非効率的であることから、開発途上国等保健システムの構築・改善段階にある国にとって保健医療システム改革の一環として患者安全システムに取り組むことの重要性が指摘されました。

その他にも、これまで医療安全の主な対象となっていた入院治療のみでなく、多くの患者が一番初めに医療サービスにアクセスする外来やプライマリーケアにおける医療安全を考えることの重要性、患者のエンパワメントや医療安全の取組における患者の参画、患者安全文化醸成のためのマネジメント層による医療現場の現状と医療倫理への理解、医療過誤等の失敗からのみでなく成功体験から学ぶことの必要性などが登壇者から指摘されました。

また、一部のアジアの国やJICAから患者安全文化を醸成する手法として5S-KAIZEN-TQMの有効性が言及されました。今回、患者安全にアプローチする方法として挙げられたものは、WHOの患者安全ガイドラインの順守や、ICT活用によるデータ管理等、政策レベルの手段やコストがかかる手段が中心であったため、その中で5S-KAIZENはコストをかけずに直接的に患者安全に取り組める具体的な手法として注目を集めていました。

我が社は、現在、「カイゼンを通じた保健医療サービスの質向上」研修や「タンザニア国 地域中核病院マネジメント強化プロジェクト」を通じて、5S-KAIZEN-TQMアプローチによる保健医療サービスや経営の質向上を支援しています。今後も人々がより良い安全な医療サービスを受けられる世界を目指し貢献していければと思います。

【参考】第3回閣僚級世界患者安全サミットの開催についてhttp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000202494.html