我が社では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「エルサルバドル国・病院前診療の能力強化プロジェクト(第1期)」を請け負っています。
プロジェクトの概要と活動の様子を一部ご紹介します。
プロジェクトの目的は、サンサルバドル首都圏において病院前診療に携わる人材(保健省救急医療局、保健連帯基金、非営利団体等)を対象にした病院前診療提供者の能力強化、病院前診療の適切なモニタリング評価体制の確立、コミュニティ住民の救急救命に関する理解と参画の促進により、首都圏において質の確保された病院前診療の提供を図ることです。また、首都圏での成果を基に、同国全域に質の確保された病院前診療の普及に寄与することが期待されています。
エルサルバドルは、火山の噴火や地震など自然災害に対して脆弱な国で、災害医療体制が先行して構築されました。一方、平時の救急医療体制は不十分であったため、同国保健省内に救急医療局を2012年に新設し、首都圏に救急医療システム(Sistema de Emergencias Medicas、以下「SEM」)を2013年12月に導入しています。
しかし、SEMの運用にあたっては、患者の搬送時の判断や処置など病院前診療を提供する人材の技術水準が安定していなかったり、行われた判断や処置を事後に検証する評価体制が確立されていなかったりと、多くの課題があります。
このような背景の下、エルサルバドル政府は、病院前診療の技術の強化及び普及を通じて、傷病者の救命率の向上に貢献することを目指し、日本政府へ技術協力プロジェクトを要請しました。
本プロジェクトは、以下の4つの成果の達成を目指しています。
成果1:病院前診療提供者に対する研修・継続教育の過程が強化される。
成果2:SEMの病院前診療に対する適切なモニタリング・評価体制が確立される。
成果3:サンサルバドル首都圏住民の救急救命に関する理解と参画が深まる。
成果4:他の地域へ、サンサルバドル首都圏の病院前診療の成果を普及する礎が形成される。
エルサルバドルの救急医療体制の特徴は、赤十字社、緑十字社、救助部隊等の非営利団体が患者搬送の長い歴史と経験を有し、病院前診療提供者として大きく貢献している点です。本プロジェクトにおいても、カウンターパート機関である保健省に加え、協力機関として各成果の活動に参画いただいています。
例えば、成果1の活動では、「病院前診療に必要な知識を標準化するための計画実行」に係る技術チームが結成され、保健省救急医療局の職員のほか、保健連帯基金、非営利団体(赤十字社、緑十字社、救助部隊)、国家文民警察、消防隊がメンバーとして参画しています。同チームは、国家の統一的な「病院前救護基礎過程」研修プログラムの策定、同研修で使用する教材の作成作業に着手し、協議を重ねています。
このほか、コミュニティの住民向けの啓発教育活動では、保健省のカウンター部局のほかプライマリーヘルスケア局の協力を得て実施予定です。
活動の進捗については、今後も引き続き、ご紹介していきます。