我が社では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「エジプト国保健医療セクター情報収集・確認調査」を請け負っています。この度、本調査の一環で、エジプト国の救急医療を担う救急機構(EAO:Egyptian Ambulance Organization)関係者の本邦招聘事業を支援しました。
2016年2月、日本・エジプト両国首脳間で「エジプト・日本教育パートナーシップ」が打ち立てられ、今後5年間で少なくとも2,500人のエジプト人留学生および研修生が教育・保健分野を中心に日本に派遣されることが発表され、留学生借款による支援が予定されています。これを受けて、保健分野の一つとして、エジプト国の救急医療の人材の質を高めようとEAOが設立を進める人材養成校(Ambulance Academy)の指導者を養成する短期研修が計画されています。
本招聘事業は、EAO関係者に日本の救急医療システム、救急救命士制度や救急救命士教育課程に関する理解を深めてもらい、研修の内容を具体化することを目的に、2016年12月5日~16日の日程で実施され、EAOの長官と副長官が関係機関を視察訪問されました。
この視察訪問は、厚生労働省や総務省消防庁、東京消防庁、北九州市消防局などの行政機関、救急救命士の教育機関である国士舘大学や一般財団法人救急振興財団・救急救命九州研修所(ELSTA九州)、救急医療を提供する医療機関、救急車の架装メーカーなど、日本の救急医療に携わる様々な機関の協力を得て実施されました。
ここでは、その一部を紹介します。
国士舘大学のスポーツ医科学科は、救急救命士を養成する日本で初めての4年制大学として2000年に設立されました。国士舘大学では、救急救命士の教育課程に関する講義をいただくとともに、学生の実習風景を見学しました。
国士舘大学:
国士舘大学 防災・救急救助総合研究所
http://www.kokushikan.ac.jp/research/DPEMS/index.html
また、西日本の消防機関の救急救命士を養成するELSTA九州(福岡県北九州市)では、同校の研修内容についてご講義いただくとともに、実習風景を見学させていただきました。
招聘期間中に神奈川県消防学校で開催された「第13回 東日本学生救急救命技術選手権」も視察しました。この大会には、東日本にある15校、総勢106名が参加し、外傷や意識障害、循環器疾患など、さまざまな病院前救護を想定したシナリオに基づき、参加者は知識と技術を競いました(総合成績1位は、国士舘大学でした)。
北九州市消防局の小倉北消防署では、実際の救急車を見学し規格や設備を確認しました。
EAOの長官と副長官は全ての講義・視察において熱心に質問され、非常に活発な質疑応答が繰り広げられました。目的であった研修内容も具体化されるとともに、お二人からは、「日本の救急医療制度や実施体制について理解を深め、エジプトにおける将来の救急救命士育成と救急隊員の能力の底上げを目的としたAmbulance Academyの設立に向けて多くの学びがあった」と感想が述べられました。
滞在中、日本の文化にも触れられたお二人。
過密なスケジュールを終えて、無事に帰国の途に就かれました。