エジプト国保健医療セクター情報収集・確認調査(エジプト国・救急機構の本邦招聘)

我が社では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「エジプト国保健医療セクター情報収集・確認調査」を請け負っています。この度、本調査の一環で、エジプト国の救急医療を担う救急機構(EAO:Egyptian Ambulance Organization)関係者の本邦招聘事業を支援しました。

2016年2月、日本・エジプト両国首脳間で「エジプト・日本教育パートナーシップ」が打ち立てられ、今後5年間で少なくとも2,500人のエジプト人留学生および研修生が教育・保健分野を中心に日本に派遣されることが発表され、留学生借款による支援が予定されています。これを受けて、保健分野の一つとして、エジプト国の救急医療の人材の質を高めようとEAOが設立を進める人材養成校(Ambulance Academy)の指導者を養成する短期研修が計画されています。

本招聘事業は、EAO関係者に日本の救急医療システム、救急救命士制度や救急救命士教育課程に関する理解を深めてもらい、研修の内容を具体化することを目的に、2016年12月5日~16日の日程で実施され、EAOの長官と副長官が関係機関を視察訪問されました。

この視察訪問は、厚生労働省や総務省消防庁、東京消防庁、北九州市消防局などの行政機関、救急救命士の教育機関である国士舘大学や一般財団法人救急振興財団・救急救命九州研修所(ELSTA九州)、救急医療を提供する医療機関、救急車の架装メーカーなど、日本の救急医療に携わる様々な機関の協力を得て実施されました。

ここでは、その一部を紹介します。

国士舘大学のスポーツ医科学科は、救急救命士を養成する日本で初めての4年制大学として2000年に設立されました。国士舘大学では、救急救命士の教育課程に関する講義をいただくとともに、学生の実習風景を見学しました。

国士舘大学:

http://www.kokushikan.ac.jp

国士舘大学 防災・救急救助総合研究所

http://www.kokushikan.ac.jp/research/DPEMS/index.html

心肺停止の傷病者に対する気管挿管の実習風景(国士舘大学)

心肺停止の傷病者に対する気管挿管の実習風景(国士舘大学)

また、西日本の消防機関の救急救命士を養成するELSTA九州(福岡県北九州市)では、同校の研修内容についてご講義いただくとともに、実習風景を見学させていただきました。

実習風景(ELSTA九州)

実習風景(ELSTA九州)

招聘期間中に神奈川県消防学校で開催された「第13回 東日本学生救急救命技術選手権」も視察しました。この大会には、東日本にある15校、総勢106名が参加し、外傷や意識障害、循環器疾患など、さまざまな病院前救護を想定したシナリオに基づき、参加者は知識と技術を競いました(総合成績1位は、国士舘大学でした)。

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東日本学生救急救命技術選手権の様子

東日本学生救急救命技術選手権の様子

北九州市消防局の小倉北消防署では、実際の救急車を見学し規格や設備を確認しました。

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EAOの長官と副長官は全ての講義・視察において熱心に質問され、非常に活発な質疑応答が繰り広げられました。目的であった研修内容も具体化されるとともに、お二人からは、「日本の救急医療制度や実施体制について理解を深め、エジプトにおける将来の救急救命士育成と救急隊員の能力の底上げを目的としたAmbulance Academyの設立に向けて多くの学びがあった」と感想が述べられました。

日本食を楽しまれるEAO長官(写真右)と副長官(写真左)

日本食を楽しまれるEAO長官(写真右)と副長官(写真左)

滞在中、日本の文化にも触れられたお二人。

過密なスケジュールを終えて、無事に帰国の途に就かれました。

コンゴ民主共和国国立生物医学研究所拡充計画準備調査

弊社では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する無償資金協力案件「コンゴ民主共和国国立生物医学研究所拡充計画準備調査」を請け負っています。

中部アフリカに位置するコンゴ民主共和国(「コ」国)は大陸第二位の広大な国土(日本の約6 倍)を有しており、周辺9か国と国境を接することから、「コ」国の平和や安定は地域に多大な影響を与えてきました。保健分野においては、高温多湿の気候から、エボラ出血熱を含む熱帯感染症の発生・流行国となってきました。また、脆弱な保健システムや限られたサービスデリバリー能力といった課題を抱えており、低い保健指標にも表れているほか、過去7 回にわたってエボラ出血熱の流行を経験しています。こうした背景のもと、「コ」国政府は国家保健計画を策定し、「全国民への質の高い基本医療サービスの提供」を目標とし、中でもエボラ出血熱をはじめ、結核、マラリア、HIV/エイズ等の感染症対策は最重要課題に位置付けられています。

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本事業は感染症対策を担う唯一の中央機関である国立生物医学研究所の検査・研究及び研修実施のための施設及び機材を拡充することにより、熱帯感染症等の病原体の検体の同定、基礎的研究、医療従事者や研究者の育成促進を通じた感染症対策の取組強化を図り、もって同国の社会サービスへのアクセス改善に寄与するものです。

2016年6月から7月にかけて、調査団の一員として、弊社から2名(機材計画、機材調達計画/積算)が対象施設のあるキンシャサで現地調査を実施しました。対象の研究所施設の現状をハード・ソフトの両面から調査するとともに、関係各省庁との面談、関係者との協力内容についての打ち合わせ、建築資材・研究機材の現地代理店等の調査、現地調達となる資機材・内国輸送費・車両費等の単価調査など、業務内容は多岐にわたりました。thumb_IMG_1929_1024

サバナ気候であるキンシャサでは、調査団の滞在中の6月から8月にかけては乾期にあたり、雨が降ることがありませんでした。気温は20℃後半になることが多かったですが、曇りの日が多く日差しはあまり強くはありませんでした。日本の真夏に比べると過ごしやすい気候でしたが、治安の問題から、日中・夜間とも徒歩での外出は許可されていませんでしたので、傭上した車両に乗り市内での調査となりました。

調査を通じて、対象の研究所が抱える問題や案件を通じて検討をするべき「コ」国ならではの課題が明らかとなってきました。今後は調査で得られた情報を国内で解析し、その情報を基に協力範囲を定め、詳細設計を行っていく予定です。

モルドバ国医療機材維持管理改善プロジェクト3

「モルドバ国医療機材維持管理改善プロジェクト」の活動の一環として2016年12月8日、9日に「医療機材維持管理に係るV4+日本協力ワークショップ」を開催致しました。当該ワークショップは医療機材の維持管理を担う機関として設立される医療機材管理センター/ユニット*の設置基準ガイドラインと業務ガイドラインの内容を協議・決定すること、また医療施設の方々に適切な医療機材管理の重要性を伝えることを目的としております。

当該ワークショップにはモルドバ国保健省、JICA、キシナウ市保健局、医薬品・医療機材庁、スイス開発協力庁、モルドバ工科大学、全国の3次レベル・2次レベル病院45施設といった様々な機関の方々に加え、V4諸国(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)の代表としてポーランドからPiotr Augustinyak教授が、またルーマニアの代表としてCalin Corciova教授が医療機材技術者として参加されました。

IMG_0256 初日8日は、医療機材管理に関する経験を共有するため、保健省、スイス開発協力庁、モルドバ工科大学の代表からモルドバの医療機材維持管理の現状について説明を頂いた後、ポーランド、ルーマニア、日本の参加者より各国の医療機材管理の現状について紹介がありました。その後、これらのプレゼンテーションを踏まえて参加者で医療機材管理について協議を行いました。

IMG_2704 2日目の9日は、医療機材管理センター/ユニットの設置基準ガイドライン案の内容について、グループに分かれて協議を行い、その結果について各グループが発表を行いました。また業務ガイドラインの内容の一部である医療機材管理フォームの意義と内容として追加すべき点について活発な議論が展開されました。

IMG_0289ワークショップ後に参加者からは医療機材管理に関する初のイベントとして有意義な内容であったとの評価を頂きました。今後はこのワークショップの結果を踏まえて、医療機材管理センター/ユニットの設立に向けて設置基準および業務ガイドラインの修正・最終化を行います。

 

タンザニア国地域中核病院マネジメント強化プロジェクト

弊社では、2015年5月より独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する技術協力案件「タンザニア国地域中核病院マネジメント強化プロジェクト」を請け負っています。

タンザニアでは、5歳児未満の死亡率や乳児死亡率など子どもの健康分野では、1990年に比べ大きな改善がみられるものの、妊産婦死亡率の改善や医療従事者の不足など保健分野にて大きな課題を抱えています。

本プロジェクトは、タンザニア全国に27ヶ所ある州レファラル病院(RRH)の病院経営の適正化と改善をすることで、提供される保健医療サービスの向上を目指します。

RRHは、分権化された保健システムの中、タンザニアにおける2次医療圏の中核的な医療施設の役割を果たすことがますます求められており、①RRHの病院運営層(RRHMT)の基礎的マネジメント能力の強化、②RRHMTの計画策定能力向上、③RRHに関するモニタリング評価機能強化、④カイゼン手法を通じ、RRHにおける資源管理や質改善の取り組みの強化、⑤病院運営審議会(HAB)によるRRHの監督の質改善、⑥タンザニアの病院マネジメントに関する取り組みおよび保健分野における質改善の取り組みがタンザニア国内およびマラウイ、ウガンダ、ケニア等の他アフリカ諸国への共有、が具体的な本プロジェクトの最終的な成果となっています。

本プロジェクトは、1年次(2015年5月~2016年8月)、2年次(2016年10月~2020年5月)の2つのフェーズで実施される予定で、弊社からは、5人の専門家をタンザニアに派遣し、タンザニア保健省の活動を支援しています。

本案件によって、RRHの医療サービスの向上がタンザニアの健康改善に貢献することを願りながら、これらの課題解決と目標達成に向けて、タンザニア側の関係者と力を合わせて取り組んでいます。

在外補完研修にて、研修員とタンザニアの医療施設スタッフ間でKAIZEN活動に関するディスカッションがされている様子

在外補完研修にて、研修員とタンザニアの医療施設スタッフ間でKAIZEN活動に関するディスカッションがされている様子

 

 

 

KAIZEN指導者研修にて、Lean Managementの重要性に関する講義の様子。

KAIZEN指導者研修にて、Lean Managementの重要性に関する講義の様子。

 

病院マネジメント教材策定ワークショップにて、病院マネジメント教材(案)の改善点についてグループディスカッションを行っている様子。

病院マネジメント教材策定ワークショップにて、病院マネジメント教材(案)の改善点についてグループディスカッションを行っている様子。

マラウイ国病院運営改善に向けた5S-KAIZEN-TQM普及

我が社では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する技術協力案件「マラウイ国病院運営改善に向けた5S-KAIZEN-TQM普及」を請け負っています。

マラウイは、ザンビア、モザンビーク、タンザニアと国境を接する内陸国。タンザニアとモザンビークとの国境には、アフリカで三番目の面積、深さは二番目の湖(マラウイでは「マラウイ湖」と称する)を有しています。

マラウイ湖

マラウイ湖

 

 

 

 

 

 

 

経済状況は、世界銀行の調査(2014年)によると、マラウイの国民一人当たりの所得は186カ国中170位と世界最貧国の一つです。

マラウイでは、保健医療人材や医薬品などの資源不足により、保健医療施設において安全かつ質の高い保健医療サービスが阻害されているという課題があります。このような状況下、同国保健省は、日本の製造業で発展したマネジメント手法である5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)による職場環境の改善、KAIZEN(カイゼン)による業務改善、総合的品質管理(Total Quality Management(TQM))を段階的に病院管理に取り入れる5S-KAIZEN-TQMアプローチを導入し、保健医療サービスの質向上を目指しています。本案件は、同国保健省のイニシアティブによる持続可能で自立的な同アプローチの普及と定着に向けて、関係機関の実施体制の整備および実施能力の強化を図ることを目的に、我が社から3名の専門家を派遣し、保健省の活動を支援しています。

2015年12月末現在、5S は25の医療施設で導入され、内8医療施設に対してKAIZEN研修が実施されました。本案件では、5SやKAIZENにかかる研修や実施医療施設の巡回指導を通じて、人材育成や施設の実施能力の強化を図っています。

KAIZEN基礎研修の様子(2015年10月)

KAIZEN基礎研修の様子(2015年10月)

 

各研修では、積極的な姿勢で臨む参加者が多く見られ、研修の事前・事後のテスト結果からは研修参加者の知識向上が確認できます。ファシリテーターは、参加者と双方向のやり取りができるよう講義方法を工夫したり、研修内容の改善に向けて積極的に意見を出し合ったりする姿が見られるようになってきました。

 

5Sを導入した保健医療施設では、不要品の廃棄、業務手順に沿った必要物品の配置など、5Sの実践によりサービス提供における安全性と効率性が向上しており、施設の環境整備に伴うサービスの質の向上、ならびに医療機材や医薬品などの医療資源の適切な管理向上につながっています。

5S実施施設の病棟内保管室

5S実施施設の病棟内保管室

 

 

 

 

図2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、マラウイの5S実施施設には、多くの青年海外協力隊が派遣されていて、活動の推進に大きく貢献してくださっています。

巡回指導などで施設を訪問した際に、5Sの好事例とともに、5S活動の意義を理解し、笑顔で実践する病院スタッフに出会うと喜びを感じます。

5S活動を笑顔で実践する病院スタッフ

5S活動を笑顔で実践する病院スタッフ

 

 

 

 

 

 

 

今後の課題としては、5S活動の施設全体への普及拡大、またKAIZENによる業務改善の継続的な実践が挙げられます。また、多数ある医療サービスの品質保証プログラムの統合と横断的な質管理部署の設置、ならびに国、地域、県、施設レベルでの標準的な実施体制が整備されることが求められます。

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本案件は、中間点を過ぎましたが、これらの課題解決と目標達成に向けて、同国保健省をはじめ、マラウイ側の関係者と力を合わせて実施していきます。

モルドバ国医療機材維持管理改善プロジェクト2

「モルドバ国医療機材維持管理改善プロジェクト」に従事するため、9月より再度モルドバ共和国に来ております。前回のブログにも記載致しましたが、本プロジェクトの目的は、モルドバ共和国全土に医療機材管理センター/ユニットを設置・機能させることを通じて医療機材管理体制を構築することを最終目標として、その体制案の検討とともに首都キシナウ市内のパイロット医療施設にその足掛かりとしての医療機材管理センター/ユニットのパイロット組織を構築することとなります。

上記目的を達成するために、まずモルドバ国内における医療機材管理の現状を把握することが必要となります。そこで6月から7月にかけて保健省関連部局をはじめとした保健医療分野の関連諸機関と首都キシナウ市、北部のベルツ市、南部のカフール郡における3次から1次の医療施設を対象とした医療機材管理の実態に関するインタビュー調査を実施致しました。

モルドバ工科大学へのインタビュー調査の様子

モルドバ工科大学へのインタビュー調査の様子

 

 

 

 

 

 

国立共和国医療診断センターへのインタビュー調査の様子

国立共和国医療診断センターへのインタビュー調査の様子

 

 

ベルツ市Family Medicine Center No.1へのインタビュー調査の様子

ベルツ市Family Medicine Center No.1へのインタビュー調査の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カフール郡病院へのインタビュー調査の様子

カフール郡病院へのインタビュー調査の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、本インタビュー調査の結果を踏まえ、モルドバ全土の3次から1次までの254か所の医療施設を対象とした医療機材管理の現状に関するアンケート調査を実施致しました。アンケートの内容は機材維持管理を担当する人材や業務の実施状況だけでなく、維持管理予算、意思決定等の組織に関する事項、さらには本プロジェクトを通じて構築される医療機材管理体制に関する希望や意見といった広範囲かつ多くの質問事項に及びますが、現時点で240か所以上の医療施設から回答を頂いていることからも医療従事者の機材維持管理に対する関心の高さが伺えます。

現在、その結果を集計・分析しており、今後はその結果を踏まえて、保健省のカウンターパートともに医療機材管理を担う組織として設立する医療機材管理センター・ユニットの役割・配置・予算の案を含む設置基準ガイドラインの素案を作成致します。本案は今年12月初旬に開催予定のワークショップにて、モルドバ全土の機材維持管理担当と内容についての協議を行い、最終化することを予定しております。

ペルー国 災害時における救急医療に係る情報収集・確認調査

thumb_DSC01784_1024死ぬまでに行きたい絶景として有名なマチュピチュをはじめ、世界各地から観光客がやってくる世界遺産大国ペルー。日系人も多く暮らすこの国は、日本と同じく環太平洋火山帯に位置し、地震や津波、洪水、土砂災害など多様な自然災害リスクを抱えています。2007年のリマ沖を震源地とするM8の大地震は、イカ県を中心に甚大な被害をもたらしました。

現在、我が社はペルーにおける災害リスク管理に主眼を置き、新規支援の可能性を検討するための「災害時における救急医療に係る情報収集・確認調査」を請け負っており、今回は第一次調査として3週間ペルーに出張して参りました。

IMG_1060ペルーは沿岸部・アマゾン地域・アンデス山岳地帯と、3つの非常に異なる地形をもち、その特殊性から自然の恩恵を受ける一方で、様々な災害リスクにさらされています。ペルーには多くの防災関連機関が設置されており、そのひとつである国立工科大学地震防災センター(CISMID)は1986年にペルー国の要請を受け、日本の技術協力によって設立されたものです。センター長をはじめとし、研究員の多くが日本の大学で地震や津波対策を学んだ経験を持っているとのことでした。このCISMIDがリマの14ヵ所を対象とした建築物の耐震脆弱性の調査を行った結果、実に70%の病院において脆弱性は高く、建て直しや補強が必要であることが明らかになっています。

thumb_DSC01535_1024今回は防災関連機関およびリマ市の三次医療施設を中心に調査を実施しましたが、なかには施設自体が歴史的建造物であり、取り壊しや耐震補強が困難だという病院もありました。築100年を超え、老朽化も進んでいる病院の災害対策は、近年改定された国の病院建築基準においても早急に対処すべきところですが、文化遺産保護の観点から物事はそう簡単ではなく、ジレンマを感じます。

IMG_1442調査した三次医療施設のすべてが、高度医療を求めて全国から訪れた比較的貧しい人々で溢れ、病院の構造上・機能上の許容範囲を超えた状況にありました。さらには、保健省が設置した緊急医療援助サービス(救急車搬送システム)は非常に限局的であり、この役割を実質担っているのは消防隊員でした。これらの消防隊員はなんとボランティアで活動しており、ペルーの人々の並々ならぬボランティア精神には、ただただ頭の下がる思いです。平時においてもリファラル体制が確立されていないなど、保健医療や救急医療の課題が山積しているペルーですが、どのような支援がペルーにとって適切であり、必要とされているのかを、今後の調査で明らかにしていきたいと思います。

thumb_DSC01483_1024thumb_DSC01924_1024

タジキスタン共和国ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画準備調査

我が社では、「タジキスタン共和国ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画準備調査」を請け負っております。本調査の対象は、タジキスタンの南部アフガニスタンとの国境に位置し、国内で最も人口の多いハトロン州にあるハマドニ県の中央病院小児科病棟です。

ハマドニ県中央病院 小児科病棟

ハマドニ県中央病院 小児科病棟

本件は医療施設としては劣悪な環境下にある小児科病棟の建て替え及び医療機材の整備を内容とする無償資金協力事業「ハマドニ県小児医療機材・施設改善計画」を日本政府に要請したものです。

要請には、一般病室の他、小手術室、超音波検査等の検査室、集中治療室(ICU)、処置室等を兼ね備えた小児科棟の建設と必要な医療機材の整備が含まれます。

対象病院であるハマドニ県中央病院は、人口約13万人のハマドニ県の2次医療施設として、産婦人科棟、外科棟、小児棟、検査棟等の独立した施設から構成されています。本院は、近隣県の病院よりも劣悪な状態にあると言われているように、病院内の多くの建物は、旧ソ連時代に建てられた大変古い1階建ての平野造りであり、対象である小児科棟も同様に古く、腐食が激しい建物でした。

閑散としている小児科病棟の集中治療室 (ICU)

閑散としている小児科病棟の集中治療室 (ICU)

現在の小児科棟は、一般病室と集中治療室(ICU)で構成されています。ICUと言いましても、輸液ポンプ、ネブライザーがあるだけで、本来ICUに整備されるべき高度医療機材は無く、重症患者の集中治療が出来る環境とは言い難い状況でした。

このような環境下においても、病院スタッフは、入院中の子供たちのために病棟内をきれいに掃除し、床を磨いている様子を何度も見かけ、タジキスタンの医療スタッフの勤労な様子を伺うことができました。

調査中、小児病棟に入院中の患児に付き添う母親にお話を伺う機会がありました。

「冬期には、子供がよく体調を崩すが、病院に連れて来たくない。この病院の中は、自宅よりも寒くて、凍えてしまうので、病気を治すために来た病院で子供はかえって具合を悪くしてしまう。新しい小児科の建物が完成したら、冬でも病気の子供たちを暖かい病室の中に入院させてあげられたら、親にとってはこの上なく嬉しいこと。」

小手術室の様子

小手術室の様子

ハマドニ県では、厳冬期に気温が氷点下20度まで下がり、大変厳しい環境になりますが、現在の小児科病棟では暖房設備は老朽化し、使えない状況です。患児の母親の言葉にあったように、このことが患者の病院へのアクセスの阻害要因の一つとなっていることが考えられ、病院統計上においても冬期の患者数は他の月の3~5分の1程度となり、著しく少ないことがあらわれています。

 

また、保健省の2012年の統計データでは、ハマドニ県のあるハトロン州は、人口の半数が貧困層であり、5歳未児死亡率(43対出生千)および乳児死亡率(34対出生千)は、タジキスタン国内でも最も高いという現状です。この保健指標だけではなく、現地での状況や医療従事者や患者さんへの聞き取り調査から、ハマドニ県中央病院の施設や機材整備の改善による小児の健康改善は急務であるということを理解できました。

首都ドゥシャンベからハマドニ県をつなぐ幹線道路

首都ドゥシャンベとハマドニ県をつなぐ幹線道路

また、調査地であるハマドニ県へは、首都ドゥシャンベより車で2時間半から3時間程度です。本院で診断・治療が難しい患者は、高度な医療施設へリファーラルされることになっており、そのうちの7割の患者は首都のトップレファラル病院へ搬送されます。本案件で小児科病棟が整備されることにより、今まで診断・治療のために首都に行かざるを得なかった患者が減ることも期待されています。

 

タジキスタンと日本は、20年以上の友好関係があり、タジキスタン国内では親日家の多さを実感しました。タジキスタン国内には、日本語を学ぶ機関も数か所あります。今回の調査においても、日本への留学経験がある勤勉な日本語通訳さんたちに大変お世話になり、調査を滞りなく終えることが出来ました。

活気のある首都ドゥシャンベのバザールにて

活気のある首都ドゥシャンベのバザールにて

本案件によって、タジキスタン共和国ハマドニ県の小児医療サービスの向上が子供たちの健康改善に貢献されることを切に願っております。

 

 

 

カンボジア王国 無償資金協力

院内の風景

院内の風景

調査に行く国々では、医療機器の管理は常に懸念事項であり、調達を計画・検討する際にも重要なチェック項目です。管理体制が整っていない施設に、管理の必要な機材調達を計画するわけにはいきません。

今回紹介する施設は、カンボジア王国首都のプノンペンにある日本の無償資金協力で建設され、また医療機材の管理を技術協力プロジェクトで支援していた施設です。

 

17年の年季の入った検診台

17年の年季の入った検診台

ワークショップ

ワークショップ

長期の継続的な使用をしているにも関わらず、痛みが少なく、大事に使って頂いていたことが見てすぐ分かる施設、機材が多い事が印象的です。写真は産婦人科用の検診台です。17年も毎日、患者さんを乗せて検査をしていた年季を感じさせません。きちんとした丁寧な手入れがされてきたのでしょう。

技術協力プロジェクトにて協力を受けていた医療機材の管理ですが、病院の中には各種工具が取り揃えられ、ひと通りの機材点検や修理が出来るような設備が備えられ、信頼のおける技術を有した職員が働いています。

小さな細かい故障も丁寧に作業をするよう教育を受けているようです。病院の作業場では傷んで修理の必要となった機材の調整や修理にあたるスタッフの熱心な姿が見ることができました。

修理作業にあたるスタッフ

修理作業にあたるスタッフ

 

 

 

 

 

 

レストラン

レストラン

カンボジアでは、レストランや物産店に行っても、料理や民芸品にカンボジアの人々の繊細な感性が活かされた芸術作品を楽しむことができます。こういった様々な分野で活かされる技術や精神があるからこそ、医療という場においても、患者さんに対する親切な対応のみならず医療機材などの丁寧な扱いが出来るのだろうと痛感いたしました。

猫

訪問者である私達にも丁寧な挨拶をしてくれる病院スタッフのホスピタリティに惹かれ、院内の涼しい環境に逃れてきた猫を発見しました。年間を通じで最高気温が30℃を上回るカンボジアでは猫が一番快適な空間を知っているようです。