タジキスタン共和国

タジキスタン共和国・・・と聞いて、すぐにその正確な位置を頭の中に浮かべることができる人はそれほど多くないのではないでしょうか。

私の場合、タジキスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、カザフスタンなど似たような名前は知っていても(似ているというよりは、単に末尾の「スタン」が一緒というだけですが・・・)、「地図のあの辺りかなぁ~」くらいのもの。そんなタジキスタン国に8月末から無償資金協力(母子保健)の現地調査に行ってきました。

日本からトルコ、イスタンブールを経由してタジキスタンの首都ドゥシャンベへ。夏は気温が40~50℃になると聞いていたので灼熱地獄を想像し戦々恐々としながら現地に乗り込んだものの、気温が40℃を超えていても湿度が低く乾燥しているため、かなり過ごしやすく驚きました。

さて今回は、首都にある産科病院や地方にある州病院の産科・小児科病棟の医療機材支援ということで、対象サイトの医療機材調査を行いました。驚いたことに病院内で使用されている医療機材のほとんどが今から30年以上も前に作られたという旧ソ連邦製のものばかりで機材の種類も非常に限られています。かなりネンキの入ったものばかりでしたが、いまなおその1台1台に大切に愛着をもって使っている様子がうかがえました。

気温が高くても湿気が低いため日本の蒸し暑さに比べれば過ごしやすいですが、さすがに1日中病院内をまわり調査しているとだんだん疲れが出てきます。そんな時、この疲れを癒してくれたのがこの写真!生まれて間もない赤ちゃん(それも1列に並んでいます)。

 

 

 

 

 

 

そして病院を退院するお母さん、赤ちゃん、親類一同、それになぜか楽器隊のメンバー!?

 

 

 

 

 

 

このような微笑ましい寝顔や風景をみながら、今回のプロジェクトが少しでもこの国の明るい未来につながればと切に感じました。

最後にもう一枚。こちらもなかなか可愛らしいですよ。

 

 

 

労働ビザ(続編)~長い道のり~

つい先日、ザンビアの「Immigration office(出入国管理局)」に行ってきました。

Work Permit(労働許可証、労働ビザ)を申請してから1年3か月の時を経て、ようやく許可証が出来上がったとの知らせを受けたからです。全く音沙汰がなかったので、正直なところ許可証は半ばあきらめていました。

当初は申請してから1か月で許可証が出来上がるといわれたのに、許可証自体の品切れ状態が続き、臨時の許可証(紙切れ1枚)に、1~2か月毎に更新してもらっていました。実に10回以上延長スタンプを押してもらうこととなりました。出入国管理局でビザを受け取りに来ていた他の日本人も、「申請がおりるのを1年以上待った」とのことでした。

数か月前のある朝9時半ごろに、大臣レベルの偉い人が抜き打ちで出入国管理局を訪れたところ、管理局の従業員が全く働いておらず、外国人が長い行列をなして待たされる光景を見て唖然とし、従業員たちを叱責したことから彼らの就業態度がガラリと変わり、これまでペンディングになっていた労働ビザが次々に発行されるようになったらしい、という噂を聞いていました。

実は、今回のミッションが現行プロジェクトで最後の派遣となるため、この新品の許可証を使用する機会もあと1か月なのですが・・・

JICA地域別研修「5S-KAIZEN-TQMによる保健医療サービスの質向上」の本邦研修を支援しました

2012年8月3日から13日まで、「きれいな病院プログラム*」の仏語圏の国々を対象に、JICA地域別研修「5S-KAIZEN-TQMによる保健医療サービスの質向上」の本邦研修が、JICA東京国際センターで実施されました。弊社は、同プログラムを支援するJICAの技術協力「アフリカ地域医療施設機能改善プログラム準備調査」の一環として、研修実施を支援しました。

本研修は、仏語圏アフリカの9カ国、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、マダガスカル、モロッコ、ニジェール、セネガル、マリ(ただし本年は不参加)を対象に、2011年から実施されている研修の最終年で、今回は「5S活動の定着からKAIZENへのステップアップと定着」を目的に実施されました。弊社は、研修内容の検討、事前・事後評価の実施、演習指導、研修中の資機材の準備などを支援しました。

参加者からは、「国の開発レベルに関係なくKAIZENの取り組みは必要だと感じた」、「職場の環境改善だけでなく、医療サービスの向上にもつながっていた」などの感想が寄せられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同研修参加者の皆さんは、本邦研修後は、9月17日から25日までセネガルで実施される在外補完研修にも参加します。弊社は、各国の戦略計画の策定などを支援する予定です。

*「きれいな病院プログラム」は、アフリカ地域の15カ国を対象に、日本型品質管理手法(5S-KAIZEN-TQM)を活用して保健医療施設(病院)の経営管理の向上を目的に、2007年にJICAが開始したプログラムです。

詳しくは、主力事業「5S」をご覧ください。

 

病院の停電

2012年6月中旬に、 政府による関西電力大飯原発(福井県おおい町)再稼働方針の決定を受け、大阪市の橋下徹市長は16日、「実際に停電になれば自家発電機のない病院などで人命リスクが生じるのが大阪の現状だ」と述べた、とインターネットのニュースで見ました。

 

この言葉を聞いて、真っ先に思い出したことは、ザンビアにある二次病院(比較的ザンビアでも大規模レベルの病院)でつい先日起こっていた停電でした。その日は、医療機材の担当官とお昼ご飯を食べていました。そこにかかってきた一本の電話。

医療機材の担当官が応答します。

 

「なに?停電?」

途上国で、前触れなしに停電が起こるのはよくあることです。

「バックアップのジェネレーターが作動しない?」

「30分くらいか・・・」

 

停電している各部署から、医療器材管理部に苦情がたくさん届いているそうです。

電話対応を終えた担当官が、「手術室や集中治療室(ICU)に電気が供給されていない・・・」「ジェネレーターが何らかの理由で作動せず、今も電気がないらしい。」と話しました。

良く起こることなの?の質問に、苦笑いをしていた担当官の顔が忘れられません。

 

大変な事態です。

 日本の2次レベルくらいの大きな病院であれば、消防法等の関係で、停電時に自動的に電源供給ができる非常電源(自家発電設備および蓄電池設備)が数種類設置されています。その前に、停電そのものがほとんど起こらないのですが・・・

 

手術室やICUの照明や医療機器への電源供給が途絶え、非常用の電源に切り替わらなければ、結果的に患者の命を奪ってしまう可能性があることは誰も否定できません。 

自分がもし、患者だったら、患者の家族だったら、そしてそこで働く医療者であれば・・・と考えずにはいられませんでした。

停電が起こらないように最善を努める日本において、このザンビアの大病院で頻繁に起こる停電は、まさしく「ありえない」こととして映るのだろうなと思いました。

ザンビアでの活動

現在、ザンビア国で保健投資支援プロジェクト(*1)を実施しています。3州(ルサカ州、東部州、西部州)をプロジェクトサイトとし、1~3次医療機関の医療資機材の維持管理能力を向上させることを目的としています。 プロジェクトでは、2011年からマネジメントツールの一つである5S手法を活用し、施設管理能力の強化のための活動を行っています。パイロット施設として活動を開始した首都ルサカにあるカブワタヘルスセンターとチャワマヘルスセンターでは、5S手法を用いた施設管理が順調に定着してきました(*2)。 なかでも積極的に5Sを導入しているカブワタヘルスセンターを保健大臣等が訪れ、その取り組みに感銘を受けて帰って行ったそうです。 現在、施設管理の専門家が着任し、首都ルサカのパイロット施設で行われている経験や成果をもとに、プロジェクトの対象州である東部州、西部州、ルサカ州の他の保健施設で5S活動を展開するためのワークショップを開催中です。

 

 

このトレーニングには、施設管理(5S)トレーナー候補と、新たな活動展開時に中心人物になる方々が参加しています。今後の活動展開について活発な協議も行ったほか、実際にカブワタヘルスセンターにも訪問し、5S手法を用いた施設管理の実際を見学しました。参加者はカブワタヘルスセンターの施設見学後、自分たちの保健施設でも5S手法を取り入れたいとやる気をみせました。

*1:http://www.jica.go.jp/project/zambia/004/outline/index.html

*2:http://www.jica.go.jp/project/zambia/004/news/20120514.html

ヘルスセンターでの出来事

先日ザンビアのとあるヘルスセンター(一次機能病院で簡単な処置を行う外来棟をもつ施設。医療費は無料。センターのレベルによるが入院棟、周産期病棟や母子保健病棟を備えるところもある)を訪れた時の話です。

施設の中には、電球がはめられていない電気、蛇口が設置されていない水回り(水が出ない)がたくさんあります。

電球を買わないのか、蛇口を買って修理しないのか、一つ一つの質問に担当者は「既に電球も蛇口も購入して修理できる状態になっている。」と答えました。ではなぜ、それを修理しないのか・・・・ 

「修理をする暇がない」という答えを想像していた私の期待を裏切り、帰ってきた言葉は「修理をしてもその部品を盗む人がいて、修理するのをためらっている」というものでした。 

先日、いつの間にか、水が出なくて使用できなかった洗面台(配管含む)がそっくりそのまま消えていたそうです。患者が盗んだのだろうと、よくあることを伝えるような語り口で話しました。そのような返事は予期していなかったため返す言葉をみつけるのに数秒かかりました。

 

 

 

 

 

 

洗面台があった場所

 

患者が1日1000人を超えるような大きなヘルスセンターでは、患者やその家族でごった返し、24時間利用者に目が行き届くほどのスタッフ配置もなされていないため、そういった盗難を防ぐことは難しいようです。

 

病気になっている人のために無料で治療が行われるヘルスセンターで、ヘルスセンター自身が被害にあうという事実が、なんとも悲しく思われました。

辰野

保健省との定期会議

お久しぶりです。

忙殺され、あっという間に帰国を迎え、今は日本にいます。

ザンビアの暑さが嘘のように、日本は秋真っ盛りでとても過ごしやすい日々です。

 

時折、「ザンビアの同僚は今頃何をしているのかな」、と出勤中の電車に揺られながら思い出します。

いつも忙しい保健省の同僚ですが、最近は約2週間ごとに定期会議のために集まってくれます。そこでプロジェクトの進捗を確認するのですが、仕事のピリッとした空気を和ませてくれるのが、このチョコレート。

 

 

 

 

 

 

 

日本人のお土産で喜ばれるNo.1は、なんといってもチョコレートです。ザンビアに売っているチョコレートとは違い、穏やかな甘みが人気の秘訣(だと思います)。 1袋があっという間になくなります。

 

現地で時間を共に過ごすほど、冗談を言い合える付き合いとなります。

 

またザンビアに戻るときには、チョコレートを手土産にしようと思います。

辰野

 

 

ザンビア大統領・総選挙の結果

9月20日に行われたザンビア大統領選挙ですが、開票結果が23日未明に発表されました。

結果は「Don’t KUBEBA(Don’t Tell=誰にも言わずに投票して)」をキャッチフレーズとする野党PFが勝利しました。

25日付のElectoral Commission of Zambiaの発表によるとPFのマイケル・サタは46.6%、MMDのルピア・バンダは33.8%でPFのサタさんの圧倒的勝利だったそうです。

 23日の未明、結果がTVで発表されてから、ザンビア人の喜びようはすさまじく、真夜中にも関わらずクラクションを鳴らしながら走り回る車、歓喜の雄たけびがいたるところから聞こえ、爆竹(花火?)音が朝までやみませんでした。

23日昼間にPF党首マイケル・サタさんが新大統領として大統領宣誓式を高等裁判所の広場で行いました。歴史的な瞬間を一目見ようと、多くの人たちが駆け付けました。大きな広場には隙間がないほど多くの人で埋め尽くされ、テレビでもその様子は放映されました。民衆の歓声が大きすぎ、マイクが意味をなさず、新大統領の宣誓は、参加している人はおろかTVの前に座る人にもほとんど届きませんでした。      

 

宣誓式の最後の去り際に、PFのサタさんは「これからはDon’t KUBEBAではなく、公にPFを応援してほしい」と語って民衆の前を去って行ったと人づてに聞きました。

その夜には、多くの人たちがお祭り騒ぎに明け暮れたそうです。翌日の新聞の一面です。

MMDを代表する前大統領のルピアさんも、新大統領の宣誓式にかけつけ、新しい大統領の誕生を祝いました。この行為は、異例のことですが、一部ではこれまでの元大統領の不正行為を水に流してもらおうという憶測も流れています。

いろいろと課題を抱えるザンビアですが、新政権への民衆の期待は、貧困・職業問題です。国民の80%が職のない現状をどうにか打破してほしいと願う国民の切なる想いが今回の結果を導いたのでしょう。

今後、ザンビアの新政権発足に際し、いろいろな人事異動も懸念されますが、ひとまず選挙が無事に終わったことには胸をなでおろしています。

 辰野

ザンビア大統領・総選挙9月20日実施

2011年9月20日に予定されているザンビア大統領・総選挙にあわせ、徐々に街中でもその雰囲気が感じられるようになってきました。

街中には、ポスターや垂れ幕が目立つようになりました。休日や夕方には、支持する政党のTシャツを着た人たちが車の荷台に乗り、太鼓で音を出して街を走ります。

      

一方で、各政党の決起集会が行われ、ヒートした群衆によるデモが時折確認されるなど、JICAや大使館からも緊張感のある連絡が回ってくるようになりました。

 選挙を目前にした数か月で、病院があちらこちらに新規オープンしたり、インフラ設備が急激に整うなど、現政権のアピールも強いうえ、携帯のメールに「MMD(現与党)に投票を!」と呼びかける内容が個人あてに届いたり、政党支持者が個人の携帯電話に直接投票を呼び掛けてくるなど(日本では考えられない類の選挙運動ですが・・・)、各政党の戦略は様々です。

↓↓この写真。よく見ると、選挙活動用のポスターとしては不思議な写真です。人が黙っていてほしいときにとるポーズ(「シーッ」という仕草)です。

 

 

 

 

 

 

 

右上にある緑のポスター「Don’t KUBEBA」は、PF(野党)のポスターで、英語と現地のベンバ語を混ぜて「言わないで!」(=他の人には言わずに投票して!)という意味だそうです。公的機関の人々は、MMDを掲げなければいけないようで、PF支持者であっても公にはできない現実があるようです。

先日のある新聞では、PFの応援活動をしていた人が、警察に取り押さえられ、拷問を受けたという内容の記事が載っていました。(信憑性に関しては不明)

前回の2008年の選挙では、MMDのルピアバンダさん(現大統領)が40,09%の票を獲得し、PFのサタさん(38.13%)を僅差で抑え当選しています。

 今回は、現政権に不満をもつ青年層が有権者の多くを占めることから、結果は予想できないとされています。

 選挙の結果により、大きな暴動のリスクもあり、いろいろと仕事のうえでも影響が及ぶ可能性がありますし、今一緒に仕事をしている人たちの上司(大臣、局長レベル)の人事も懸念されます。

いろんな意味で、大統領選挙が無事に終えられることを祈ります。

辰野